1.森の生態研究所とは?


 私たちの身のまわりには森、林、原っぱ、水田、畑、川、流れ、池など様々な”自然”があります。これら自然は、長い年月をかけ、人の働きかけによりできてきたものであり、遠い昔の自然とは違います。スギ林は、基本的には植林したものであり、原っぱは何らかのきっかけで放棄された土地がそのままになってできたものです。また、水田や畑は湿地や森林などを開墾して作られたものです。
 これら人との関わりで作られた”自然”には草花や樹木などの植物、昆虫、鳥などの動物がある程度は見られます。しかし、場合によっては動植物の貧相な自然もあります。このように、本来の複雑な自然とは違い、動植物の少ないより単調な自然、つまりなんらかの撹乱のある自然が作られた”自然”の特徴です。
 これに対し私たちのまわりには高尾山など動植物の豊かな場所(様々な森や渓谷など)があり、地域本来の指標となるべき動植物が数多く生息生育している場所があります。高尾山とその周辺には約1600種程の維管束植物が生育しており、哺乳類31種、鳥類138種、両生爬虫類23種が生息していることが記録されており、高尾山は動植物の生育生存にとって貴重な場所であることが分かります。
 このような高尾山の動植物などの自然を調べることは、私たちの身のまわりにある”自然”を知る手がかりを与えてくれます。私たちが普段なにげなく見ている”自然”、そこにはそれなりの自然があり、そうなった原因があるはずです。子供の頃からある斜面のミズキ林、学校周りのエノキ・ムクノキ林、公園横の昔からある草地など私たちが存在は知りつつもよくは認識していない自然は大小あると思います。もし、それらに出現する動植物の種類や生態がわかれば、身近な自然の成り立ちが分かり、自然を見る目がより広がることが予想されます。
 私たちの身のまわりの”自然”を知る手がかりとして、地域の指標となるべき自然を調べ、保全の手立てを考え、啓発して行くことはとても重要です。これらのことを担っていくのが当研究所の目的です。
 そこで、当研究所では、地域の指標となるべき森や草地、湿地などの生き物を調査研究し、これらの調査結果を皆さんと共有することにより、自然のすばらしさ、奥深さを知ってもらいたいと思っております。


森の生態研究所